部屋の中は船底のようなありさまだ。
和室でもソファーの上でも、全員ダイイングメッセージの出し放題で、様々な方向を指して動かない。あるいは動けない。
昨夜の宴の残骸ピラミッドをすり抜けて、新鮮な空気を求め、ホテルの外へ散歩に出た。
昨夜からの雨は、シトシト降りつづいている。
乳白色に煙っている朝もやの景色というのも、またいいものだ。
お世話になった |
♪ただ一面に立ちこめた・・・ |
朝風呂を軽くすませ、部屋に戻ると船底のマグロたちは仮死状態から、できそこない人間へ変態しかけていた。昨夜のコトを思い出せない奴、思い出したくない奴。どっちにしてもこの部屋にはこの分別しかない。
「じゅんちゃん、オレ今日使いものにならんわ・・・」
るーずぱんてぃ/おっちゃんが、電池残量5%くらいの寝起き顔で俺につぶやく。
うん、一目見てワカルヨ。主観と客観の一致ってヤツだな。
さらにおっちゃん、窓を見ながらつぶやく。
「ん・・・? 雨? 演奏どうなる? やるの?」
おっちゃん、あんたは小学生か! 他のコトは中止でも、あんたはやりなさい! 雨に打たれなさい!
8時前。
スタッフ&演奏メンバーたちがダラダラとロビーに集合しはじめた。子どもたちと女子は元気だ。本日の人格になっている。
全員で記念撮影をして、すちゃらかしゃいにんぐはここでお別れとなる。
昨日、俺たちの演奏を聴きに来てくれたS原クマさんから、「家へ遊びにおいでよ」と誘われたのだ。そして、そういうプランにすぐ乗っちゃう、すちゃらかしゃいにんぐなのだ。
クマさんの家は、最近併合された北杜(ほくと)市にあり、車で1時間かからないって言ってた。
撮影後、それぞれの方々に挨拶をして、ジミヘンねぇさんともお別れをして、るーずぱんてぃ/朋音ちゃんとは熱いハグで感謝を伝えた。
「楽しかったよ。また会おうゼ!」
メガネ女子と眼鏡オヤジィー |
トリオ ザ ビーナスライン 撮影=ジミヘンねぇさん |
小雨の中をクマさん宅へ向かって車を走らせる。
まっすぐな道をすー・・・・・・・・・・っと走ってく。
ただただ走る。
高原にライ・クーダ―の歌がよく似合う。
徐々に雨は上がり、薄日が差してきた。
風が車内を吹き抜けていく。
ん~・・・いい気分。いい一日になるな。
2年前の関西ツァーでは、K塚プロからお借りした車両「すちゃらか/アンパンマン号」が活躍した。今回は少人数なので俺の車を使用している。
で、車名は「すちゃらか/えぼ鯛号」とした。特に意味はない。
往路の車中で類ちゃんが「えぼ鯛って横顔がカワイイ!」と言ったので、即あやかったというワケだ。
俺も今度生まれてくる時は、魚コースのえぼ鯛科を受けてみようと思う。
えぼ鯛号のカーナビは、バージョンアップなるモノをやっていない。
したがって、新しい道路とか町名とかに弱い。
というか、役に立たない。トンチンカンカーナビになる。
さもなければ、かなりいい加減で、ざっくりと大ざっぱだ。まったく持ち主に似やがって!
昨日、中央道諏訪南インターを下りて、カナディアンファームの住所を入力して向かってたら、とんでもない所をグルグル走らされた。最終的には、遭遇した村人に尋ねるというオーソドックスな質疑応答方式で到着出来たのだった。
昨晩、ホテルに到着した後も、カーナビのヤツは一晩中目的地を抱えたままでいたのだろう。
今も「およそ30m先右方向です」などとタワケタことを口ばしり、クマさんちと離れた場所にずんずん誘導しようとしている。
だが、3人ともホテルを出てからカーナビにはカンペキに「シカト」体制だ。全くの無視で聞いていない。聞こえない。
まっ、俺が目的地の取り消し操作を知らない、というのが一番の原因ではあるが・・・・・・
代わって、類ちゃんがスマホでナビをしてくれる。
こっちの音声は大スキ!
「次の信号左折です!」
「はーい!」
「突き当り右に曲がります!」
「はいはーい!」
「しばらくまっすぐでーす!」
「ウ~ン・・・、ボクはクネクネしちゃう!」
「このへんです!」
類ちゃんが、ナビ上での到着を告げた。
まっすぐな舗装道路。
左手にはずっと林が続き、所どころに民家が見える。
時刻は10時をちょっと回ってる。
クマさんには、途中で2度ほど通過地点のメールを入れたのだが返信はなく、電話も応答なしなので、いきなりの突撃侵入になってしまった。
道路から家までは40~50mくらい。人は通らず、車は時々しか走ってない。
俺が偵察隊になって、車を降りた。
郵便ポストを見るとなにも書いていない。
さらに先へ進むと、車が2台止まっている。リアドアを見ると、「原発いらない!」のステッカーが貼ってある。
「おぉ、ここだな」100%の確信で車中の二人に合図を送り、家に近づく。
だが、人の気配がない。大きな犬小屋はからっぽで、二羽の鶏が地面をつついているだけだ。
「おはようございます」「ごめんください・・・」反応がない。
確信は80%くらいに下がってきた。
さらに3回ほど繰り返したら、若いおなごが出てきた。
「すちゃらかしゃいにんぐの日川といいます。ここはS原さんのお宅ですか?」
おなごは、「はい。そうです」と言いながら、頭上に?マークを3個くらい浮かばせている・・・
すると、「あっ、じゅんちゃん!」2階から女性の声が・・・
「おぉ、ちえちゃん!」
「あれ? 夕方来るって聞いたよ」
「ううん、夕方には東京に帰るんだよ」
類ちゃんは今夜、CD製作の録音が待っているので、早めに東京に戻らなくてはならないのだ。
「えぇ! そうなの」
ちえちゃんも?マークを5個くらい浮かべて下りてきた。
どうやら伝言ゲームの典型的食い違い変換パターンが行なわれていたようだ。
うーちゃんと類ちゃんもやって来て、挨拶と紹介をしてS原家に上がらせてもらう。
クマさんとはのみ亭30thパーティーとかで会っているが、ちえちゃんとは30年ぶりぐらいか・・・。懐かしいゼ・・・。
おなご=ほーほちゃんとは初対面だ。で、いきなり娘姿なのだ。
ちえちゃんは、昨夜近くの山で行なわれた「たき火コンサート」に行き、ずぶ濡れで夜中の2時過ぎに帰宅したそうだ。そして現在、睡眠不足気味で俺たちにお茶を入れてくれている。
なにからなにまで、すんません。
しばらくして、クマさんが犬の散歩から帰ってきた。
改めて、お茶とコーヒーで再会の乾杯をする。
昔話、積もった話、友人たちのワルクチと近況報告・・・、あとからあとから話題が出てくる。
そして、「突然だったから、何もないの」と言いながら、ケーキから始まりパンを焼き、ご飯も炊いてくれて、テーブルにごちそうがドンドン出てくる。
クマさんもちえちゃんも、料理が上手で手際がいい。
クマさんは、あちこちからパンの注文をもらっているらしく、いくつも焼いていた。
クマさんのパンは、ずっしりとして、いい香りで、やさしい甘みがあって、とてもおいしい。
作り手の人柄が出ているパンです。
クマさんのパン。おいしいよ |
ほーほちゃん作成のチラシ |
家にも味がある |
大僧正みたいなライル |
庭に二羽のただしいニワトリ |
ほーほちゃんは、類ちゃんのアコーに興味津々で、ボタンの配列や左手の押さえ方とかを教えてもらっている。
教え方と呑み込みとがいいのだろう。音がどんどん滑らかになっていく。
若いもんの出す音というのは、いいものだ。
しばらくすると、クマさんが連絡したのか、ご近所の呑み友達(?)がやってきた。
なみさんは二人の娘のお母さん。
ちょっと遅れてセメント工事中のS水さんとS道さん。
そして、クマさんが嬉しそうに「演奏聞かせてよ」と言ってる。
相変わらず仕事が早い。
いつの日かすちゃらかでやりましょう |
というワケで、ごちそうのお礼に、歌でお返しということになり、たちまちクマさん宅コンサートとなった。
お客さんは、クマさん一家3名。なみさん・S水さん・S道さんの3名。それとたまたまクマさんにパソコンの操作を教えてもらいに来た近所の青年。
こちらは、類ちゃんアコー・俺ギター・うーちゃんコーラスで、すちゃらか「なるほー」バンドだ。
「なるほー」は、疑問が解決され納得した時に出る類ちゃんのフレーズで、じわじわとオヤジたちにも浸透しかけているのだ。
では、「初めまして、すちゃらかしゃいにんぐです。」
「スターダスト ラブ」「ビァ樽ワルツ」そして、クマさんのリクエストで「サイフはカラッポ」の3曲を演奏し、拍手をたくさんいただいた。
ん・・・、たまらなく幸せな一瞬!
幸せな時が流れていく。 撮影=クマさん |
(スマホだと再生できない場合があるのでURLを貼ります。再生できない場合はこちらでご覧下さい。https://www.youtube.com/watch?v=l44kH33_HG4
一番年配のS道さんは元大工さんで、この間までアンティーク店をやっていたそうだ。
クマさん宅の隣に住んでいて、現在一人で家を建築中だという。
クマさんが、「見に入ってごらんよ」と言うので、ちょっとお邪魔して内から外から拝見させてもらった。
家の中は、廃材をたっぷり使い、床も柱もガッシリしてあたたかい。調度品のひとつひとつまで職人好みの材料を使い、どこを見てもため息が出るほど心憎い作りになっている。
むき出しのゴツイ梁が、「どうだ!」と我々を見下ろしている。
「はい! 参りました!」
九割がた完成じゃないかと思ったが、まだまだこれからだと言う。時間をかけて、楽しみながら進めているようだ。
粋なセンスと洒落たあそびゴコロがいたる所に収まっていて、木とモノづくりを愛する人の静かな主張が溢れているステキな家だった。
いいなぁ・・・。いくつになっても自分の好きなもの、目指すものをやり続ける男ってステキだなぁ・・・。あっ、女の人もネ。
お宅拝見から帰る3人 撮影=類ちゃん |
お宅拝見から帰る4人。 撮影=類ちゃん |
さぁ、そろそろ帰りの時間がせまってきた。
クマさんとちえちゃんから、今度はちゃんとセットするので、改めてすちゃらかライブをやってほしい。と、ナイスな提案をいただいた。
「オーケイ ナウ! 必ずやろうよ。 また来るぜ!」
記念写真を撮り、サヨナラを交わし、再びの日を約束した。
また来るよ! 左から、淳・クマさん・ライル・類ちゃん・ちえちゃん・ズッキ・うーちゃん 撮影=ほーほちゃん |
帰路の中央道は日曜日の行楽帰り渋滞と重なったが、医療関係から天文学まで、類ちゃんの尽きないボケ話で、苦も無く乗り越えた。
まん丸お月さんも空にいいカンジだ。
高井戸で高速を下り、環八に入る手前で、CDをJIM KWESKIN JUG BAND の「UKELELE LADY」に切り換えた。ウクレレで始まった旅は、ウクレレで終わらそう。
♪If you like ukulele lady
Ukulele lady like you~♪
19時。世田谷到着。
出迎えてくれたナビ、・・・いいや、「なびー」に報告をし、「おつかれ」と「楽しかったネ」を何度も交わし合い、「すちゃらかしゃいにんぐ長野山梨デビュー」の旅は終了したのだった。
《営業2課 じゅんぼう》
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