さらば!六本木なんて題にして、現場が六本木だった時の最後の大穴について書いておこうと思ったんだけど。六本木の現場は6月に終わっていて、次の田端の現場も先月に終わって、今は御茶ノ水に行っている。だから、今さらって言われるだろうと思うけど、やっぱり書いておこう。
六本木の現場については前にも書いたんだけど、最後の最後に大きな穴が残った。
最初は池の底に敷いてあった白い細かい砂をだしていて、Kさんが下に掘り始めたあたりが深そうなので、変わってほしいと先生に云われて、掘り始めた。表面をみると結構広いのでSさんと一緒に掘り始めた。南北にベルトを作った西側だった。掘り始めると結構土が湿っていて、瓦も多くて掘りにくい。陶器片も結構あり、貝も出てきた。途中でピンホールを刺すとどこを刺しても20センチ位で止まるのでそんな物かと掘り進んでみるとなかなか底が出ない。再度ピンホールを刺してみると、また20センチ位で止まる。途中に埋まっている瓦や石にあたって止まるみたいだ。汗だくになりながら掘っても掘っても底に行きつかない。Sさんが「あっ!骨だ」と、言ったので見に行くと動物の腰のあたりの骨が出ていた。先生からそのままのしておいてと言われ、一応ビニールをかけてそのままにして掘り進む。陶器片、貧乏徳利、銀箔のついた木片、赤や青の派手な色の付いた木片、土で作ったお釈迦様の人形、小魚の骨、漆塗りの椀の漆の部分のみ、昔のお金、銅細工物、そして当然瓦などなどあっという間に点箱が一杯になってしまう。
しばらく掘ると壁がスロ―プになってしたの所の土が崩れて奥へ穴が開いた。その奥は抉れていてまだ相当ありそうだった。そっちには手は付けず全体にさげてゆく。ベルト反対側の北の部分でOさんが掘り始めていた。幅を若干縮めて掘って行き、底が出たという。どう見てもこちらの穴と繋がっているはずなのに、もう底が出ると言うのはおかしい。こちらは全然先が見えない。さっきの壁の奥もあるし。
わたしらが掘っていたところを保留して、先にOさんが掘ったところの南側の半分を下げる事になった。最初はわしとSさんAさんIさんTくんとでやった。雨予報で休みになったときも、なんとかやりたいと連絡をもらい掘った。結局雨が本降りになった中で、足元がずぶずぶになりながら掘った。そこを最初に掘ったところと高さを合わせて、骨の出たところを写真に撮ったりした。南側の残りも雨でゆるくなったため、Kさんが掘り始めた。と、同時に東側の床と思えるところをキレイに出していったら、幅1メートルちょっとの廊下のようなものだった、手前はまだ下に掘って行ける。南半分の残りも掘り終えたので、全体に下げて行く事になった。4人で横になって掘りながら下がって行く、土は前に置いてある箕に入れる、もしくは箕を運ぶ人がじょれんで集めて箕に入れて運ぶ、段々下がって行き箕に入れた土を捨てるのにも手間がかかるようになり、床を出した廊下のようなところに一人立ち、その向こうの室だった穴に捨てる、そこも一杯になってきたので、そこにも一人入り、廊下から貰った土を奥に投げる。
そんなこんなでわあわあ言いながら、掘り進んでいくと、最初の頃のOさんが床だと言って出したところが、西に続いていて階段状に下がって行った。さらに掘ると西から南にカーブを描いている。すると先生がまいろまいろいどかんなあと言う、なんですかと訊くと、かたつむりのカラのようにぐるぐると回りながら掘っていく井戸の事だという。東京には無くて地方に結構あるらしい。階段の行きついたところが最初に掘った場所で壁のしたが抉れているところだった。ひと坪位あって奥の天井も結構な高さがあった。そこをほぼ掘り終わるころに、TさんとAさんがその先はと言ってちょこちょこ掘りだした。先生はそこまでやらないでいいといったんだけど、Tさんは気になってしょうがないからと言って掘って行く。さらに階段が出てきてしまった。2~3段出してみたら、今度は東に向かっている。
工期も終わりに近づいていて、人も半分以下に減っていて、時間に余裕が無い為、重機で掘る事になった。ユンボがすぐ上まで入ってきて掘って行く。適当なところでわしが壁の土をユンボのバケットに入れ、Aさんは階段を出しながら土をバケットに入れる。翌日も同様な作業を繰り返したが、その日は強力な助っ人が来てくれた。人間ユンボといわれるYさんで、Yさんには底近くのユンボの届かないところを掘ってもらった。その後床も削ったら丁度ユンボのアームの届く手前20センチ位の所が床だった。わしも相変わらず壁の土を削って放り投げていた。Aさんは階段を出し終わり壁を上の方からキレイにしていった。階段の降り切ったところとYさんが出した床がほとんど同じ高さで、その先が階段2段分位深くなっていた。そこは水がでてどろどろになっていた。これで終わりにしましょうの声をきいて、ほっとした。翌日朝、前夜に降った雨で穴の底は水が随分溜まっていると誰かが言っていた。掘り残してあった地下室の一部を掘っていたら、水をポンプで抜いたら、、阿多掘ってもらいますからの声。ええっ?まだやるのか。しかし、ちょっと中途半端だった気がしてたんで、水が抜けるとすぐに行った。しかしどろどろのままだった。Aさんと二人で掘りだした。わしは水をバケツに入れて、ヌルヌルになって滑ってしまう階段にスポンジを敷いて滑らないようにしたところに、SさんT君などが並んでバケツに入った水と箕に入った泥を運んでもらった。水をかき出しながら掘っていると、ローム層の割れ目からきれいな水が流れ出ている。どろをほとんど取ったところで写真をとり、測量をして終了。結局最後の階段を降りたところは水場だった。大名屋敷の池のなかだったから、少なくとも池が出来るずっと前に使われていたんだろうと思う。終了と同時に埋め戻しが始まりその日の内にほとんどが土で埋まってしまった。1月半もかかって掘った穴があっという間に埋まってしまう。これがこの仕事の現実。
すちゃらか・たまらん・うーたろう
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