古い友人の元の会社の同僚家族と相席になった。
適当に話しながら飲んでいると、小学生の息子さんが「あっ、またいる」と言って、入口の
上の方を指差した。そこにはガラス越しに一匹のヤモリがいた。ヤモリはじっとガラスにへばり
ついていた。わしがその店で見たのははじめてだった。話を聞くと夏にはよくその場所に
現れるたしい。その後も何度か見かけた。いつもただじっとしているのだが、ちょっと眼を離す
といつの間にか消えている。それ以前にも何度かヤモリを見かけた事があったはずなのだが、
何時どこでとなると全然憶えていない。ただ夕暮れ時に街を歩いていると、よその家の壁に
へばりついているのを見た事があるような気がする。もうひとつはっきり覚えている時の事が
あった。フィリピンに出張に行った時に、おっさんがおいしいジュースを飲ませるスタンドが
あるからそこへ行こうと連れて行かれたのだが、はっきり場所を憶えていなくて、あるビルの
地下へ降りた。確かにジューススタンドはあったのだが、あまりおいしそうではなく周りにい
る人達も怪しそうな感じの人達だった。何気なく天井を見上げると、天井いっぱいにヤモリが
いた。グレイの天井に数十匹のヤモリがへばりついていた。あまり数が多いのでさすがに閉口
した。暑くて湿度が高いからこんなにいるんだろうか。あかん、今考えてもちょっとしんどい。
ある年の正月の元旦。さっさと眼が覚めてしまって。年賀状が来ているかと思ってポストを見たの
だがまだ届いていなかった。門の近くの塀の内側に枯れ葉がちょっと溜まっていたので、なんとは
なしに掃き出した。正月から掃除する事もないのだが。年賀状も来ていないし、まだ雑煮を食い
たいとも思わなかったので、暇つぶしにささっとやるだけのつもりだった。門と塀の境目を掃い
ていたら。あれっ?なにかうすいピンク色の塊が動いた。あらまあ、急いで手にとり二階へ駆け
上がって「Yちゃん、Yちゃん」とまだ寝ているカミさんを起こす。「なんやあ、正月の朝はよ
うから。どないしたん?」「ほら、これ見て。手の中」
「かわいい」「やろ。門のそばにおってん」「やもりの子供じゃないかな。やっちーと呼ぼう」
「飼おうか?」「飼っても良いけど。でも、えさ何食べんだろ?」「はえかなあ」「でもいまは
冬だよ」「むりかあ」「えさないんじゃ。むりだね」
名前だけ付けて、ベランダにタオルを敷いて、その上に乗せてあげた。鳥の姿は無いので襲わ
れる事もないだろう。10分ほどたって見に行くとやっち―は消えていた。まあ、またいつか
あえるさと思っていたのだが。その後は見かけていない。
お正月と云えば、というわけでございました。
営業一課 すちゃらか・たまらん・うーたろう
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